Workshop Report

日本橋のMICE事業者と「街一体型MICE」の可能性を探るワークショップ開催

ワークショップ概要

「企業の壁を超えて、MICE事業者が一丸となることで日本橋のMICE競争力を高める」ー その共通認識の下、日本橋エリアのホテル・ホールのMICE事業者は毎月、連携会議を実施している。

その一環で、2021年12月、街一体型MICEの課題や展望などを議論するワークショップを行なった。複数のホール施設で展開した『日本橋サステナブルサミット2021』の開催直後ということで絶好のタイミングだった。

ワークショップでは、コロナ禍で変化したイベント需要にフォーカスするべく、イベント来場者やツアー参加者の目線での問題提起から議論を開始。コロナ禍のMICE需要について共通見解を持った後、日本橋エリアのMICE事業者が協働して提供すべき価値やサービスメニューについて話し合った。

参加企業は以下(五十音順):
東京観光財団、日本橋室町エリアマネジメント、野村コンファレンスプラザ日本橋、マンダリン オリエンタル 東京、三井ガーデンホテル日本橋プレミア、三井不動産 日本橋街づくり部、室町三井ホール&カンファレンス

新たなイベント形式:「街一体型MICE」とは

国際会議やカンファレンス、展示会などのMICEは、コロナショックを通じて、時間と場所の制約が軽減されるハイブリッド型が中心となる一方で、ネットワーキングや、タッチ&トライなど、いわゆるリアルの「場」がもたらす体験価値について再認識されている。
その体験価値づくりにおいて、商業・経済・文化の中心地である日本橋では、MICEを1つの会場や建物内で完結させるのではなく、人・モノ・コトがコンパクトに集結した街の強みを最大限に活用し、街全体を会場とするMICEのあり方を追求している。
具体的には、助け合いの精神が根付く日本橋の企業との連携イベントや、特色の異なるホール施設群の使い分け、文化・歴史を感じられる老舗店舗、さらには屋外広場などでの開放的なアフターパーティーなど、同一会場やオンラインでは味わえない、リアルイベントならではの濃密な体験を統合し、主催者・参加者に「街一体型MICE」として提供することを目指す。
現に、MICE 大国・米国の都心部では、この形式が定着し、Fast Company 主催の「 NY Innovation Festival 2019 」では計 200 以上のサイドイベントが開催された。

ダイジェスト

具体的な設問は以下3つ
・東京開催のビジネスカンファレンス、インセンティブツアーの参加者が街や会場に求めるものは? イベントの開催前・中・後で違う?
・日本橋という街は、来場者にどういう価値を提供できる? 
・各社で何ができるか? (もし今難しい場合)何がボトルネックか?

コロナ禍のイベント参加者が東京のイベントに求めるものは何か、という議論では、「地域固有の文化に由来する“サプライズ”がより一層求められている。同時に、主催者・来場者に選択肢が用意され、選ぶ楽しさも演出しなければならない。」と語られた。

イベント主催者・来場者に対する日本橋の提供価値を話すなかでは、「コンパクトな街に、コンテンツが豊富に揃うのが日本橋。多様な好みを持つイベント来場者に対して、少人数でユニークな体験を提供できるよう、会場やプログラムを分散させるのもいい。」「立場の異なる人同士がフラットに議論する今日の場も、共創を目指す日本橋ならでは。」「老舗企業とスタートアップの共存が魅力。スタートアップとイベント来場者が交流できるように働きかけたい。」と多角的な魅力が再確認された。

各MICE事業者がどう関与できるのかという題目では、「ホテル施設というハードだけでなく、地域の飲食組合との繋がりや、ツアープランの企画力といったソフト領域で、日本橋の街一体型MICEに貢献できる。」「ロビーラウンジで、老舗店舗さんの産品の販売会を行なうのは、忙しいビジネスパーソンに喜ばれそう。」とホテル関係者が熱く語っているのが印象的だった。

同時に、課題感も明らかになった。ホール事業者からは、「イベント運営はアナログなので、複数会場で同時に展開する街一体型MICEの場合、仕組み化しておかないと手間が2倍3倍になるが、もし仕組み化できれば効率的に準備・運営できるはず。」という実感のこもった意見が共有された。

ワークショップを終えて

日本橋室町エリアマネジメント 事務局長 黒田誠

「コロナ禍を通じてオンラインコミュニケーションが普及した今、リアルイベントの意義が見直されています。その中で、五感を刺激する体験価値が重要だと、多くの人が感じているのではないでしょうか。

もちろん、そのアプローチは多様で、企業・施設単体でもできますが、街全体をイベント会場にするような数千数万人規模の国際イベントを呼び込むには、今回のようにMICE事業者が協働して、シームレスなパッケージメニューを整備する必要があります。今日のワークショップでは、大小さまざまなメニューアイデアが出てきましたし、 今後より密な連携が必要だと参加者全員が再認識できたと思います。」

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